中国遼寧省盤錦(ばんきん)市はタンチョウの繁殖地として知られている。タンチョウは、全身が真っ白な羽毛に覆われ、頭に朱色をいただく珍しい鳥類。盤錦趙圈河野生動物保護ステーションの職員、趙仕偉(ちょう・しい)さんは、30年以上にわたりタンチョウを守り続けている。

1993年、当時21歳だった趙さんは瀋陽農業大学を卒業後、同ステーションで働き始めた。当時のステーションは人里離れた荒涼とした地にあった。日干しレンガの家が数軒あるだけで、電気や水道も通っていなかった。趙さんは毎日、野生のタンチョウを救護するため奔走していた。

同市の沿岸湿地は、渡り鳥の移動ルート「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ」上の重要な休息地、越冬地、繁殖地となっている。以前は、生態環境の変化により、市内の遼河口湿地を経由するタンチョウの群れが減少する傾向にあり、タンチョウの人工繁殖は、趙さんの仕事の重要な部分となった。
幼鳥の世話のため、趙さんは昼夜を問わず全力で働いた。30年以上の間に、趙さんと同僚はタンチョウ200羽以上を救助し、繁殖させ、野生に帰した。

市は2012年、湿地保護区内にタンチョウ種源繁殖基地を設立した。趙さんら専門スタッフの努力により、同市のタンチョウの人工繁殖技術は成熟を続け、繁殖数も年々増加している。25年、人工繁殖されたタンチョウは89羽となった。
現在、趙さんの新たな任務に人工繁殖したタンチョウを野生に戻す順化訓練が加わった。次に重点的に取り組む課題について、趙さんはタンチョウに自力で飛ぶことや餌を探すことを早く覚えさせ、徐々に野生に放つことだと話した。